ムカツクからだ

ムカツクからだ


4101489211 ムカツクからだ

斎藤 孝

新潮社 2004-05
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★★★★★★★★★☆


斉藤孝さんの書籍もすでに5冊目となりました。斉藤孝さんの著書だから購入したのもありますが、どちらかというとタイトルに惹かれました。

◆「むかつく」あなたはよく使いますか?◆

最近、大量に出版されている斉藤孝さんの書籍とは少し種類の違う一冊となっています。本の構造としては、どちらかというと「論文」といった印象を受けました。文中の表現も少し難しい単語が使われていたり、普通の論文のように引用が多用されています。

また、1300人を超える学生のアンケートに基づいて考察、議論が繰り広げられています。あとがきに書かれていたのですが、この本は学生と共同作業によって作られているようです。共同作業の集大成である、「いき」の構造を意識した「むかつく」の構造図はわかりやすい大作となっています。全て読み進めた上で目にすると、「納得!」となるのではないでしょうか。

学生との共著のためか論文調で書かれているからといって読みにくいというわけではなく、新書などに比べると読みやすい類だと思います。それは、普段聞きなれている「ムカツク」が本の主題で、理解しやすいことも関係しているかもしれません。

さて見出しに触れますが、「ムカツク」という言葉をよく口にしますか?僕はあまり口にしません。本の中でも学生のアンケートで触れられているのですが、反対・批判側の学生の意見である「むかつくを使用すると馬鹿っぽい」というのがシンプルでわかりやすい理由となりそうです。同様に僕は、女の子の何でも「かわいい」と言ってしまう文化が受け入れられません。

さまざまな感情を大雑把に、あいまいに表現することができる便利な言葉としての「ムカツク」。口癖となってしまっている子どもたちもたくさんいます。それぞれの状況によって湧き上がる感情を、それぞれに合った言葉で表現しない文化は、思考を停滞させてしまいます。

◆ムカツク・からだ◆

言葉としてのむかつくを身体現象のむかつくと関連させて論述しています。この考察がとてもわかりやすく、時代・社会に合わせて言葉は生まれ、流行していくのが「むかつく」という単語ひとつでも理解できます。

文中ではむかつくの身体的症状として、

ムカツク、とはからだにとってなにか?第一に胃のあたりが気持悪く、吐きたくなってくる状態であろう。結局、吐きたい感じはあるのだけれども吐かない、あるいは吐けない、という「からだ」がそこにある。

と表現した上で、

吐き切れないもやもやを、せめて小出しにして捨てていく儀礼的な行為が、
「口癖としての軽いムカツク」である。

とつないでいます。

◆大人と子供のギャップ◆

ムカつくためには、それなりのエネルギーが必要であり、何をすればいいのか見失っている子供たちは持て余したエネルギーをムカつくことで発散しようとしています。

確かに、昔に比べると子供たちのエネルギーのはけ口は少なくなってきています。子供に一番近い存在である教師や両親は子どもたちと真っ直ぐにぶつかることを避けて、逆に子供たちに歩み寄り、すり寄ろうとしています。それが結果として、子供たちのむかつきにつながっているのではないでしょうか?

大人は社会に疲れ「癒し」を求めています。そして、その「癒し」が子供たちにも必要であると判断し、子供たちに押し付けます。しかし、作者はそこに疑問を投げかけます。子供たちに必要なことは、「癒し」ではなく「ストレス」や「義務」といったものに触れる機会を増やし、それらへの抵抗を高め、付き合い方を学習していくことだと。

深く感じたり、考えることには、エネルギーが必要である上に、学習が不可欠である。

経験則としてこれはよくわかります。そして、今の教育の現場はこのことを理解させるにはあまりにもかけ離れているということも・・・。つまり、先ほども少し書きましたが、教師は子どもたちとぶつかることを恐れ、やり過ごそうとしているのが現状です。最近、教育も活発に見直しがされているようなので、期待しています。

昔と今の日本人の呼吸を切り口にした社会的・身体的分析も興味深かったです。

ひとつの言葉からここまで掘り下げて、社会現象や教育の現場にまで言及することができるのか!と感心してしまいました。最近は、「むかつく」の流行も去ったようですが、「キレる」などの次に流行している言葉に関する本も書いてほしいな、と思いました。斉藤孝さんの授業の人気の理由がわかったような気がしました。当分の間は、斉藤孝さんの熱狂的なファンでいることになりそうです(^o^)

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